アブドル=ハキーム・ハインツはロンドン南部で育ちました。彼は7歳のときに、母親がイスラームに改宗したことをきっかけにイスラームと出会いました。
後年、彼はエジプトに数年間滞在し、イスラームについての知識と共に、アラビア語能力を身につけました。
母親が改宗したとき、彼はまだ幼い少年でしたが、そのときから彼と兄妹は教会へ行くことからイスラームの実践にかじを切りました。これは彼にとって大きなショックでした。なぜなら、それまでに教えられてきたキリスト教の価値観が彼にとっては心地の良いものだったからです。
当初、彼はイスラームを厳しい決まり事の一式として捉えていました。彼は初めのうちは、それが受け入れ難いものだったことを認めています。7歳にして、彼は礼拝し、断食することが求められました。
また、アラビア語を学ばなければならず、礼拝したりクルアーンを読んだりできるようにはなったものの、その意義を理解してはいませんでした。
しかしながら数年経つと次第に慣れ、イスラームは彼の生き方そのものになりました。彼はその頃を振り返り、10代の少年として「人生とは何か」という疑問を持ち始めることは自然なことだったと述べています。
10代の荒れた日々を過ごす中、イスラームの教えの持つ意味が彼の心を捉えるようになり、彼にとってそれはより受け入れやすいものとなりました。彼はまた、自身の人生においてイスラームが何を意味するのか理解し始め、より多くを学び始めると同時にイスラームに対する正しい理解が深まっていきました。
ハインツはこう言います。「10代の前半のときは、ムスリムであることを恥じたものでした。学校でイスラミック・スタディーを習ったものの、それはヒンズー教やシーク教のようなものだと教えられていました。」
イスラームとその追従者が、他者とは「異なる存在」と見なされていたことは、彼に影響を及ぼしました。中学校に入学する頃には、彼はイスラームと関連付けられたくないと思い始めており、イスラームを心の奥底に閉じ込めていました。
彼 はそうした反応について説明します。「それは外的なプレッシャーによるものでしたが、同時に私は自分の信仰を正当化できるだけのイスラームについてのきち んとした理解をしていたとも言えませんでした。」イスラームに対する社会的認識は、彼が自分をムスリムとして表立たさることを躊躇わせました。彼は一般大 衆の一人であることを望んでいました。それは人間性の自然な反応の結果に過ぎません。こうした考え方は、彼が14歳になるまで変わりませんでした。
そ の年齢になると、彼はイスラームの実践法を変え、他者へも表立ってムスリムであると主張できるようになりました。これは、彼がオランダ・スペイン旅行をし たのがきっかけでした。特に、実践的なムスリムたちとの出会いがあったスペイン旅行は彼にとって重要なものとなりました。
彼はこう述べます。「私が訪れたスペインのムスリム・コミュニティでは、私の世代の青年たちが宗教に対して非常に関心を持っていました。それを見た私は恥ずかしさを感じなくなりました。青年たちはイスラームを受け入れており、私はそれを誇らしく思いました。」
彼がスペインから英国に帰国したときには、15 歳になっていました。学校では新学年が始まりましたが、以前とは違って彼は内面からムスリムになっていたのです。彼は自信を持ってイスラームについて話を するようになりました。ハインツは嬉しそうにこう言います。「私は『自分はムスリムだ』と言うことができるようになりました。」
す ると、彼の同学年の間でのイスラームに対する評判が変わっていきました。彼はこう言います。「その頃になると、ムスリムであることは格好良く、おしゃれで クールなことになっていました。それは私に益々自信をつけました。それらの変化を助けた要因の一つは、個人的に全能者であるアッラーを知ることでした。」
彼は一人でいる時もイスラームについて読書し、クルアーンを少しずつ暗記しました。また、10代当時の彼の家庭はムスリムだったものの、必ずしもイスラームが適切に実践されてはいなかったことを打ち明けています。
そうしたことにも関わらず、彼の心は全能者アッラー、そしてイスラームに惹き付けられていました。彼は生活の中での困難や問題に直面すると、短い礼拝をし、心を全能者アッラーに注ぎました。彼は言います。「私はアッラーへ帰依することを学びました。」
ハインツは、ムスリムは全能者アッラーに対して真摯であり、毎日クルアーンを朗誦すべきだと信じます。それにより、彼にとって困難なの10代の時期をくぐり抜ける助けとなったからです。
自らの信仰心が高まるのと比例して、人々の彼に対する認識も変化し、敬意を受けるようになったと彼は言います。
彼 は、もし誰かが気恥ずかしそうに振る舞い、羞恥心に苛まれつつおどおどするのであれば、必然的に人々はそうした人物を一方に追いやるものだと言います。し かし、自分が真理の道にあると確信し、他人の思っていることを気にしないのであれば、そうした自信を目にした人々は彼を尊敬するのだと言います。
ハインツは確信を持ってこう言いいます。「人々はそうした性格の人物に敬意を表するものです。人々は、自己を確立させている人物に惹かれるものです。」
私たちは、友人や所属するグループなどに対して借りがある訳ではなく、自分自身でいるべきだと彼は信じています。彼は、新改宗ムスリムが他人の真似ばかりしないよう忠言します。
現在23 歳の彼は、一般的に欧米社会における彼と同世代の人々が責任感について、そして大人として何を求められているのかについて知ることに苦悩していると感じて います。彼らは特定の文化圏に属していないため、あるいは彼らの文化は騒乱に満ち溢れた世俗主義に染まるよう駆り立てるため、彼らはそのことを認識できな いでいるのだと彼は感じています。
彼は17歳のときにイスラームを本格的に実践しようと決心したとき、イスラームは厳格な行動規範を明確に提示するため、そうする助けになったと述べています。彼はそれに則り、人間としての自分の役割を理解しようとしたと言います。
彼は徐々に自分には責任があることや、最終的には成人し、より良い人間になり、他者への思いやりを持たなければならないということを理解しました。イスラームがなければ人生の目的を完全に見失っていただろうと彼は述べています。
彼は自分に与えられたものに対し、全能者アッラーに感謝しています。イスラームによって人は成熟し、他者よりも際立つ存在になることができるのです。
彼は言います。「現代社会でイスラームの知識を得ることは重要です。サタンは私たちが正しい道を踏み外すことを望んでいます。」
「正しい道を歩みたいと望んでいる新改宗ムスリムは、誠実な仲間たちの集まりを持つことが重要です。人は属する集団に大きく影響されるからです。周りの人々があなたを卑下するのであれば、そうした人々との関係を断絶しなければならないでしょう。」
ハ インツは、エジプトでの滞在経験はムスリムたちの生活について知る良い機会だったと言います。そこで普遍的なコミュニティに属していたことは、彼にとって 良い思い出となりました。エジプトではアラビア語とイスラーム学の知識を得たこと以外にも、日常生活においていかにムスリムとして生きるべきかについて学 ばせました。
彼は私たちが日常的にクル アーンを読み、それについての正しい理解を全能者アッラーに求めるべきだと言います。各々は居住地域の勉強会について把握し、それに出来る限り出席し、モ スクでも時間を過ごすべきだと言います。また彼は、インターネットでも居住地域の活動などが検索できるため、それを積極的に活用すべきだと説明します。
彼によると、ロンドンには知識を得ることのできる場が多くあり、有名な説教師も多く在住しているとのことです。彼は新改宗ムスリムがそうした機会を探し、知識を得るだけでなく善良な人々と出会うべきだと助言します。
ハインツは将来について、ただアッラーに対し最善のものを求めていると言います。彼はこう言います。「私はこれまでの経験から、より忍耐強くなりました。また、預言者(神の慈悲と祝福あれ)の教友たちについて学んだことから安定性も得ました。」
彼は、最良の男性または女性であるためには、全能者アッラーの基準に則った人生を歩むことであると述べています。
この記事は、ロンドン在住のアブドル=ハキーム・ハインツへのインタビューに基いています。